実際は、生活の事もありますので、自由自在に透析時間をコロコロ変えるというようなやり方は難しいですよね。

しかし、透析時間は変えなくても透析量は変える事が出来ます。



リン値からみる透析量


長時間の透析をやっている病院も増えてきています。

適切な透析量というのは、先日のKt/Vの記事でも分かるように、体格によって同じ透析時間が同じ透析量にならないという問題を内包しております。

どこをどう見て透析量を管理すれば良いのか?
というのは気になりますね。

実際、僕の場合はコロコロ透析時間を変えられるような病院ではないのですが、実は透析量は変える事が出来てしまいます。

現在は6時間透析を受けていて、体調が良いため変える必要はありません。

しかし、今後何らかの疾患でも起きて食べられない日々が続くような時は、血液流量(QB)280を下げてもらう、ダイアライザーの東レトレライトNV21-xの膜を小さくしてもらうなどで対応できますね。(逆に上げる事も可能です)

その他の要素でまだまだ余裕がありますので、透析時間は変えなくても透析量を下げる事が出来るんですよね。

ただ、その時の何を見て透析量を上げ下げすれば良いのか? というのは結構難しいと思います。

昨年の第13回長時間透析研究会で興味深い演題を出していた病院がありました。
福島の援腎会すずきクリニック「長時間透析における透析条件の調節方法」です。

おお!
まさしくこのテーマ(^◇^)

この時、先生は
「リンを第一に」とおっしゃってました。

援腎会すずきクリニックでは約6割の患者さんが5時間以上QB300以上(2017年11月時点)の透析を受けているそうですが、リンが上がるとQBを上げ、リンが下がるとQBを下げるなどで微調整しているようです。

心肺機能低下のため除水困難な患者さんや、高齢化が進み摂食障害などで十分な栄養摂取が出来ない患者さんもいるため、QBなどで対応し、透析時間の短縮は行っていないとおっしゃってました。

一方、オンラインHDFではリンはあまり変わらないが、QBを上げたほうがリンが下がるという事でした。

そして、千葉のあずま腎クリニック「6時間週3回透析での血流量増加による効果の検討」では、6時間週3回透析でもリンが高い場合もあるが、血流量(QB)を増加させることによりリン値を下げる効果が期待できるとおっしゃってました。

オンラインHDFでは小分子が逆に抜けにくく、リンは上がる傾向にあるともおっしゃってましたね。

なるほど。
リンですな。

このブログでは透析データでリン4~7のところが死亡率が低いところから、リン4~7を推奨していたのですが、リン管理としてはやはり標準の(おおよそ)3.0~5.5というのが基本にあるようです。

確かに現在はCKD-MBDの事もありますので、高過ぎたり低過ぎない方が良さそうな気もしますね。

SSS14



鈴木一之先生著「しっかり透析のヒケツ」でリンは?


生体を構成する大事な元素のリンなんですが、人工透析が必要な慢性腎不全では腎臓からのリン排出能力がかなり低下してしまいます。

リンが多いと、血管石灰化、異所性石灰化、二次性副甲状腺亢進症などのリスクを高めます。

また、リンが高過ぎる、低過ぎるという事自体が生命の危険因子の1つになってますね。

鈴木一之先生著「しっかり透析のヒケツ」では、1週間の透析で抜けるリン量を7で割った数値が1日の目標摂取リン量になると書かれてあります。

おお!
なるほどですね~。

透析で抜く量と、食べて摂取する量のバランスですね(*'▽')

僕自身も通常、リンが高い場合は何を食べて高くなったかを分析し、リンを上げた食べ物を食べないなどの対応でリン値と向き合ってきたのですが、(通常のリンの高いとされる食品の中でも、特に上がりやすい、それほど上がらないなどの個人差があるようです)鈴木一之先生は、リンが高い場合は透析量を増やす事も対応に含めるべきという考えがあると感じますね。

これは当時の僕の盲点で、4時間透析時代はまさかに透析量を病院が増やしてくれるとは思っていませんでしたので、選択肢になかったのです。(そもそも透析量を増やすという概念は無かった)

今週はこの鈴木一之先生に会いに行こうと思ってるんですが、(会えるかどうか分かりませんが)先生の食事に関する記述でとても気に入ってる部分がありますので、丸々引用しておきたいと思います。

世間では「透析患者=厳しい食事制限=食べられないものばかり」という思い込みがある。しかし、「1回4時間×週3回」の枠を超えて透析量を増やしていくと、塩分を除けば、食事に合わせてリン吸着薬を、量を調整しながら使ってはいるものの、カリウムの多い食品を含めて、好きなものが食べられないというようなことはまったくない。透析室では定期検査の結果が悪いと、犯人捜しに「〇〇を食べなかった?」みたいな会話がされることは多いが、医療者は「透析不足が犯人だ」とは、誰も言わない。一方、人間の食べるという活動は、生物として必要な栄養を摂取する以外に、嗜好を満足させたり、社交として必要であったりと、文化的要素もあると思う。だから、食べる事の質は生活の質に直結する。十分な透析をすることで摂取量に余裕をもたせて、食事を楽しめるようにすることは、透析患者の生活の質を上げるために、とても重要な要件であると思う。

*鈴木一之先生著「しっかり透析のヒケツ」患者になって思ったこと・食べることの質と生活の質より引用


つまりですな、リンをコントロールするのに、これまでは食べ物の内容でコントロールしてきた人は僕同様多いと思います。

しかし、透析量でコントロールするという概念を持つというのもあって良いのだと思いますね。

案外ね、僕も6時間透析になった頃、
「何でも食べられる」という事になっても、長い透析生活で培った摂生の理念が邪魔をして、食べられないんですよね(-_-;)

これを僕は「透析病」と呼びたくなりました。

ある種、精神病の一種か? と自分で思っちゃいました。

いや、確かに僕の場合はまだ6時間透析になって半年ですが、長くこの透析量を増やしてコントロールしてる患者さんからは、
「もっと自由に食べられるし、食べても増えないよ。」というような事を言われたりもします。

えっ(-_-;)
もっと・・・。

食べても増えない・・・(*´Д`)

(食べても増えないに関してはまた別機会に書きたいと思います)

透析量でコントロールするという概念はここまで食生活のを質を変えてしまうという事ですね。



透析量を増やす病院の医師の嘆き


まあ、普通はこれまで1回4時間透析以下というのが当たり前の世界でした。

ですので、多くの患者さんが、1回4時間×週3回という透析概念の中で食生活を確立してきてますね。

透析の時間延長の話を主治医が患者さんにする時に、透析での食生活の摂生の上手な人ほど説得が難しいらしいですな(*'▽')

えっ、ちゃんと摂生出来てるのに、透析時間を延ばす理由が分かりませんっ( `ー´)ノ
みたいになる患者さんがいるらしいです。

鈴木一之先生著の「しっかり透析のヒケツ」で、
「当クリニックでは、透析の枠を決めてそれに合わせて食べることで満足されているようでは困る」と書いてます(^◇^)

落ち度があって透析量を変えるのではなくて、患者の様態に合わせて透析量を変えるというのが本来の医療であるとの考えがちらりほらりと見える気がします。

僕も前の病院で5時間透析を受けてる時によく、
「えっ、5時間も透析受けとん?」と驚かれました。

田舎ですと、ちゃんと摂生できない人が受けるのが5時間透析というイメージが先行してますからな(-_-;)

4時間透析でしっかり摂生するのが当たり前という教育を受けて育っている人たちなので仕方ありません。

しかし、透析時間を延ばす事はQOL(生活の質)を下げるばかりではなく、上げる要素もたくさん持っている事を知って欲しいですね。

満足のいく食生活を送れる上に、透析時間を変えずにその他の要素でリン量をコントロールすれば間違いなく体調の良い期間が伸びると思います。

多くの透析医の先生の話でも、このリンと透析量の相関関係が、患者にとっては1番分かりやすい項目ではないでしょうか?

しっかり摂生しても、一切何の苦痛もなく、周りで誰かが大食いしててもなんとも思わないという性格の人なら問題無いですが、やはり他の患者さんが4キロも5キロも増やしてくると苦痛になって愚痴を放つ患者さんはいますよね。

そういう人は、透析量を増やし、食べて透析量でのリンコントロールをしていくという選択肢もあるのではないかと思います。

まず、透析量を増やしておけば、いざという時に下げる選択肢もありますが、透析量が少なければ、もう下げると更に透析不足が顕著になってしまうというだけですからね。

そういった理念がイマイチ世に浸透していませんね。

ですので、長時間透析を推進してるような病院では、先生やスタッフさんが説得するのにかなり骨が折れるようです。


参考資料:第13回長時間透析研究会 援腎会すずきクリニック「長時間透析における透析条件の調節方法」 あずま腎クリニック「6時間週3回透析での血流量増加による効果の検討」 
参考文献:鈴木一之先生著「しっかり透析のヒケツ」


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