まず、最初に言っておきます。

「過剰透析」というのはあり得ません。

これが前提なのです。



週3回、1回4時間という透析に根拠はあるのか


そもそも、健康な人の腎臓は1日24時間働いています。

1週間で168時間です。

人工透析とは人工腎臓とも言います。

これまでは一般に週3回、1回4時間の透析が標準でした。

これでは人工腎臓は週12時間しか働いていないという事になりますよね。

健康な人は週168時間働きっぱなしであるのに、我々は週12時間という事で、圧倒的に少ない訳です。

えっ、たった週12時間で、健康な人と同じだけ腎臓機能が発揮できてるの?
という疑問が生じますね。

透析で行う人工腎臓療法は、本物の腎臓には敵わないとよく言われます。

敵わないものを使って、週12時間で事が足りる訳がないのですな。

しかしながら、ベッドで横たわって受けるのが一般的な透析療法ですから、そんなに長くやられては精神的にも肉体的にも厳し過ぎますし、生活へ与える影響度も高過ぎますよね。

そこでおおよそこのくらいなら耐えられるという形で週3回、1回4時間という事になっていったと思われます。

同時に、医療従事者さんたちにとっても、そのやり方ですと必ず日曜日が休みにできますし、月水金・火木土チームの2チームに分ける事も出来ます。
更に、1日8時間労働にも対応しやすく、1ベッドで4人の患者さんの面倒を診れるわけですし、なにかとメリットが多くなるという事で、徐々にこのやり方が定着したという事でしょうね。

そこには、この週3回、1回4時間という透析スタイルがベストであるという理論は何もなく、色んなものを考えて必然的に出来てしまったスタイルなのです。

普通に考えますと、週3回、1回4時間の透析では約10年前後で合併症が出始めるとされています。

ん?
たった10年で合併症が出始める?

実際、透析で体内がどうなっていくかの大半はまだ未解明の部分がかなり多く、あくまで想定でしかないのですが、透析を受け始めて10年で体に大きく変調をきたす主原因は、引ききれない尿毒素のせいと考えられております。

引ききれない尿毒素をできるだけ多く引いたほうが良いのではないか?
という根拠の元に、透析時間を延ばしてみたり、週3回の透析回数を増やしてみたりしているうちに、その方が合併症が出にくくなるという結果になった訳です。

そこから、週3回、1回4時間の透析では透析量が足りていないという根拠が生み出されました。

当然、健康な方をモデルにすれば、週168時間透析した方が良い事は何となく掴めてきますよね。
ですから、過剰透析と言うのはあり得ないという事が分かります。
1週間に168時間以上の透析を受ける事は不可能ですから。

しかし、人工腎臓には決定的な弱点があります。

それは、全ての毒素成分を引き切れていない事や、栄養素の一部も一緒に引いてしまうという事にあります。

これが、透析量を増やす事を難しくしている訳ですね。

SSS1



それぞれメリット・デメリットはあるもののより優位な透析とは何か


透析では、現時点で特にこれという症状の無い方でも、将来的には何がしかの症状が出ると言われております。

なぜそうなるのか?

それは、引ききれない尿毒素があるか、もしくは引く事すら現在の人工腎臓では無理とされる成分があるか、はたまた、一緒に引かれる栄養素と食事の関係性において栄養不足から免疫力の弱い体を作り出してしまうからか、の3点に絞られてきました。

例えば、リンが高くならないように、皆さんは食事制限されてると思いますが、リンが高くカルシウム値が低いと、二次性副甲状腺亢進症が進みやすくなってしまいます。

これによって、骨が弱くなり、簡単に骨折してしまうという状態が起きます。

これを防ぐために、リンが高くならないように管理している訳です。

こうして、ある程度、理屈が分かっている事は対処できますが、かといって食事バランスや食事量を激しく制限してしまうと、免疫力の弱い体を作り上げてしまいますので、全てがメリットとはならない一面もある訳です。

このように、人工透析は矛盾が多く存在しており、絶対的な正解はまだ見いだされていないという事が分かります。

そもそも、腎臓を治す治療ではなく、延命措置であるという事の限界があるようです。

ですので、多くの透析医が「ベスト透析とは何か」という答えを探してきました。

その中で、透析量を増やすというのは、リン、カリウムの管理、免疫力の弱い体を作るという部分で大きな効果があったために、そこに答えを見出した透析医の先生が出てき始めた訳です。

透析量を延ばす事で、たくさん食べてもリンやカリウムが上がりにくいとなった事で、合併症が出にくくなったのは確かです。

たくさん食べても構わないため、栄養の問題もクリア出来る訳です。

一方、透析時間や回数をたくさん増やす事で毒素を大量に引けるメリットもありますが、その場合でも栄養素がその分大量に抜けてしまいますので、たくさん食べて太りやすいというデメリットも存在してます。

やはり、肥満は体に良い訳ではないため、その辺りが難しくなってきました。

また、太りますと、ドライウェイトとの相関関係で血圧が下がりやすくなったり、また足の攣りなども出やすくなるというデメリットがあります。

そして、食が細い患者さんにどう対応するかなども問題が生じます。

こういったデメリット部分も大きく、そうなってきますとこれまでスタンダードの週3回、1回4時間の透析では起きなかった問題が出てくるために、医療従事者側に難しさが出てきますので、敬遠気味になってしまう医療機関も多かった訳です。

手間がかかりますよね。



人間の心の問題を重視したい


実は僕は、透析医療の中で様々な体験をし、人間の心の弱さを感じるようになりました。

僕なんかもそうですが、人間の心にはバイオリズムがあります。

いかに優しい人であったとしても、さすがに面白くない事が続けば心が一時的にすさみます。

時には物に当たったりするような事もあるでしょう。

特に、透析を受けている患者にとっては、透析自体が決して面白い事でもないので、心に損傷を受けやすいですね。

何かの折に人に当たったりしたとしても、ある程度は仕方ない部分もあります。

また、そうした患者さんの面倒を見続けて行く医療従事者さんも、精神的にしんどい事になります。

そういう事が積み重なってしまいやすいのが透析医療だと思います。

穿刺ミスに激怒する患者さんや、患者の摂生不足をストレス解消に使っている医療従事者さんなど。
そういった現場に幾度か出会いました。

いや、決してどなたも悪気があってやっている訳ではなく、面白くない事が続けば健康・不健康に関わらず人はそうなってしまうという心の弱さを持っております。

ですので、少なくとも、患者側の食のストレスが軽減できる事や、激しい摂生をさせることを義務付ける透析医療でなくなる事は、むしろ大歓迎な気がします。

人生の面白くなさから来てしまう、人間の心の弱さが発揮しやすい環境ではなくなる気がします。

機嫌が良い時、悪い時というのは誰にでもありますからね。

虫の居所が悪い時に、変な看護をされたり、また、僕が医療従事者だったとして、ちゃんという事を聞かない患者さんがいた時には余計な一言を付け加えてしまったりするかも知れません。

場が、明るくなれば、そうした自分の心の状況でのイラついた言動が起きにくくなるという点で、大歓迎するのです。

透析量を延ばせば、体調が良くなるため、患者も明るくなれますし、またそれに応じて医療者側も余計な精神負担が減ります。

いまだに患者に激しい摂生をさせたいと思う医療従事者さんは、やはりちょっとこの環境の中で精神のマイナスが大きくなっているのだと思います。

僕は、透析環境は、人間の心をむしばみやすいと感じていました。

今回、診療報酬が透析時間の延長に優位になったために、透析医療が少し変わろうとしております。

これはそういった意味でも大歓迎のような気がします。

これまで1人歩きしていた「過剰透析」という意味不明な言葉が、数年の後、死語になる事を祈っております。

僕自身、「過剰透析」という言葉に「愛」が感じられないという奥側の要素に気付いた訳です。

透析室内で「愛情」がなくなっていく世界、その奥にあった言葉こそ「過剰透析」という言葉だったのではないでしょうか




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