先日、東京ネクスト内科・透析クリニックの陣内彦博先生の講演を拝聴してきました(*'▽')

かなり衝撃的な内容も含まれていたため、全て書く事は出来ないですが、その中から1部、先生の見解をもとに僕なりに調べて書いてみたいと思います。
そもそも、2018年度の診療報酬改定で何がどう変わるかなんですが、今回初めて、透析台数と患者割合による報酬の差がつきました。

日本の透析病院の病床数は20床~60床辺りの病院が多いのですが、100床を超えるような病院もあります。
で、透析台数&患者割合によって1、2、3と3種類の診療報酬に変わります。


人工腎臓
慢性維持透析を行った場合 1
4時間未満の場合 1,980 点
4時間以上5時間未満の場合 2,140 点
5時間以上の場合 2,275 点

慢性維持透析を行った場合 2
4時間未満の場合 1,940 点
4時間以上5時間未満の場合 2,100 点
5時間以上の場合 2,230 点

慢性維持透析を行った場合 3
4時間未満の場合 1,900 点
4時間以上5時間未満の場合 2,055 点
5時間以上の場合 2,185 点

これですな。

これがまず大問題なのです。




診療報酬改定2018が人工透析を変えてしまいそうな理由


「慢性維持透析」とは通常のHDと考えて良いのですが、透析台数&患者割合の高い病院での4時間以上5時間未満の点数は前回より120点も下がってしまっております。(透析台数&患者割合が少なければマイナス35点)

診療報酬は1点=10円です。

120点で1200円となります。

(^◇^)
1200円下がるだけ?
じゃあ、そんなに影響ないですな~(*'▽')
となってはいけません。

1人1回あたり、1200円です。

ということは・・・
仮に患者数が100人の病院だった場合

1人1回1200×1か月13回×1年12か月×患者数100人=1872万円

1872万円???
そんなに減りますか。
看護師さんを3~4人クビにしなきゃいけないくらい変わりますよ(-_-;)
医師2人くらいクビですな(-_-;)

透析病床が多く、患者数が満床に近くなってるような病院ではそんなに下がってしまうのです。

と、なりますとね、他で補てんしなくてはなりません。
まあ、出来なくもない訳です。

ところがですな、実は今回は透析膜(ダイアライザーやヘモダイアフィルターなど)も1部大きく下がってしまっているのです。

HDでは多くを、2a型のダイアライザーが占めております。
あら(-_-;)
今回の診療報酬改定で、膜面積によりマイナス130円からマイナス160円になってるではありませんか


ダイアライザー
Ⅰa 型(膜面積 1.5 ㎡未満) 1,510 円( -80 円)
Ⅰa 型(膜面積 1.5 ㎡以上) 1,520 円( -10 円)
Ⅰb 型(膜面積 1.5 ㎡未満) 1,610 円( ±0 円)
Ⅰb 型(膜面積 1.5 ㎡以上) 1,490 円(-160 円)
Ⅱa 型(膜面積 1.5 ㎡未満) 1,440 円(-160 円)
Ⅱa 型(膜面積 1.5 ㎡以上) 1,540 円(-130 円)
Ⅱb 型(膜面積 1.5 ㎡未満) 1,600 円( ±0 円)
Ⅱb 型(膜面積 1.5 ㎡以上) 1,620 円(-120 円)
S型(膜面積 1.5 ㎡未満) 1,610 円( -50 円)
S型(膜面積 1.5 ㎡以上) 1,630 円( -30 円)

仮にマイナス130円としても

1人透析1回130円×月13回×年12か月×患者数100=202万8千円

マイナス202万円~~~(-_-;)

あっら~(-_-;)
透析病院やっていけるんか?

あら?
よく見てみると、ダイアライザーは診療報酬が前回から変わってないのが2つありますよ(*'▽')

1b型と2b型の膜面積の少ないヤツはプラマイゼロや(*'▽')

という事は全員、このダイアライザーに変えちゃいましょう。
膜面積が大きい人は全部小さくしたろ(^◇^)

とか言う事は起きないのでしょうか(-_-;)

更にこの透析膜、オンラインHDF用のヘモダイアフィルターなら2750円なんですよね。
しかも、オンラインHDFは人工腎臓に今回一律プラス50点が加算されるという事なので、何気にここに売り上げを高める秘訣がありそうです。

透析膜だけで1000円以上違う上に、人工腎臓で500円アップですからな。
年間を通して考えると、売り上げだけなら相当違ってきますよ。

まあ、ここがオンラインHDFが急速に普及してしまいそうな部分なのです。

透析膜の報酬改定差がこれだけ大きいと、患者に与える影響もあなどれないと感じますな。

DSCN1759


患者割合を減らす作戦が発動する???


一見、今回の診療報酬改定では、条件付きとはいえ6時間透析に診療報酬がついたり(これまでは5時間まででした)夜間透析のプラスもついた事で、話題になりましたが、いまだに4時間前後の透析患者さんが大半を占めている関係上、透析病院への影響は少なからずあります。

水質加算も10点で1本化しましたので、これまでの優秀な病院からしたらマイナス10点で影響があります。(これまでは水質により8点か20点かでした)

なるほど。
こうした問題をどう考えるかですな。

となってきますと、透析病院運営のために、患者にどういう影響が出てくるか。

積極的にマイナスを減らし、今回加算されたところに進出して行こうと誰でも考える訳です。

今回起きる、透析台数&患者割合で診療報酬が3段階という部分の影響ですな。

これまでは患者数を増やす事で、診療報酬上のマイナスをカバーしてきました。
しかし、この戦法が通用しなくなります。

となりますとね、中規模以上の透析病院では患者割合を減らす方向で考えていくのでしょうか?

そうなりますと、「新規の導入患者さんは受け入れない」、「小うるさい患者はよその病院へ行ってもらえ」、「HDで透析膜の大きい患者はいらない」などなど、変な状況になってしまうのではないかと、僕は少し不安を覚えますね(-_-;)



オンラインHDF5~6時間が全盛になる???


こう考えていきますと、オンラインHDF5~6時間透析を透析病院ではやりたがるのではないかという事も考えられます。

まあ、過去の診療報酬改定で、5時間透析に報酬がついても、そこまで増えた訳ではないので、取り越し苦労という事もあり得ます。

しかし、陣内先生の話では、人件費に与える影響は少なからずありそうなのですな。

という事はですよ、オンラインHDF5~6時間にしてとりあえず売り上げだけでも上げていかないと、せっかく育てた優秀なスタッフさんが他の診療科や病院に持っていかれる事もあり得ますよね。

更に、オンラインHDF5~6時間って(-_-;)
いや、僕のようによく食べる患者であれば、そのくらいやってもらったほうが良いのですが、食の細い患者さんですと、体が持ちませんよね。(透析時間を延ばす事で、栄養素の除去量も増えます)

どうするんでしょうか?

陣内先生の見解でも、増え幅が2キロ以下の人が長時間透析をやると、栄養に問題が出るという話はありました。

そういう人は4時間や4時間半透析で十分なのですな。
むしろ、透析時間を延ばす事で、食生活の摂生問題が改善し、一般社会の中でやりやすくなるというメリットがあるのですが、元々食の細い患者さんで食べなくても大丈夫な人の場合は・・・。

スタッフさんの人数は減る、手のかかる患者さんに困る事になる、オンラインHDF5~6時間で対応。

とりあえず、全体患者数の3分の1くらいまで伸びて来ているオンラインHDFへの移行を考える病院が増え、この2年で透析病院のオンラインHDF化が進むのではないでしょうか?(5~6時間というのは別にして)



化学物質が大量に体に入る???


しかし、オンラインHDFというのは、僕はあまり良い印象を持っておりません。
というのは、この透析療法は医療従事者の腕が試される療法だと思っております。

HDとオンラインHDFの違いとも言えるんですが、大量の透析液が体内に入って来るのがオンラインHDFなのですな。(HDでも多少は入りますが)

という事は、いくらウルトラピュアの透析液でも、透析膜や回路は化学物質で作られており、化学物質が一切体に入らないのか?
オンラインHDFで化学物質の量が増えてしまわないのか? という心配が起きます。

もちろん、医療従事者のスキルに負うところも大きいですからな。

昨日、今日、大した臨床データも持っていない病院がオンラインHDFに手を付けると、患者さんに影響があるのではないか? となってしまいますよね。

また、診療報酬上の事を考え、食の細い高齢患者さんに無理矢理オンラインHDF6時間を勧める病院が出たりとか・・・あり得ないと思いますけどね。
水質確保が出来ていないのにオンラインHDFをやるとか(-_-;)

まあ、こうした事から不安になるんですが・・・。

取り越し苦労であって欲しいところなんですが、どうなのでしょうね(*´Д`)

ただ、早くからオンラインHDFに取り組んできた病院にとっては朗報になりそうです。


【診療報酬改定2018人工透析】診療報酬によってコロコロ透析方針が変わる病院が透析撤退を余儀なくされていく件

*あくまで陣内先生の講演から、トシヒーローが考えた見解です。
陣内先生は「オンラインHDFが急速に増える可能性がある」とだけおっしゃってました。



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