SSS78


ある透析仲間は、透析導入に際して「特にショックを受けることはなかった」と言ってました。

長年、事務の仕事をしていて、その事務所が所長の定年退職によって閉鎖することになり、その時に手に職を付けようとして3年間の専門学校に通い始めたそうです。

その3年目に原疾患が悪化してしまい、入院なども必要になり、資格取得まであとわずかという段階(実務経験なども必要なため)で夢を諦めなくなったことこそがショックであって、透析導入の段階では「早く透析を受けたい」とさえ思っていたと言うのですね。



なぜ、そう思ったかについても語ってくれました。

原疾患悪化の際に、自分と同じ疾患を持つ方のブログなどを読み漁ったらしいです。

もう、1から全ページを舐めるようにして読み、そこから対策を得ていく中で、
「透析導入は怖くない、むしろ透析した方が元気を取り戻せる」ということで、原疾患と腎不全悪化でドンドン体調が悪くなっていく中、早く透析を受けたいとさえ思うようになったということです。



そこでその透析仲間は、「在宅血液透析」の存在を知ります。

「自分はこの透析スタイルで行こう!」と決めたようでした。

泌尿器科の先生にそれを伝えたところ、在宅透析の管理病院を紹介してくれたそうです。

更にその透析仲間は、在宅透析トレーニング(自己穿刺や機械の操作などを覚えるトレーニング)を受けながら、
「フルタイムの仕事を探そう!」と取り組み、そういった支援をしている障害者雇用の仲介エージェントをお願いし、好条件の仕事を得る事にも成功。(長年事務の仕事をしてきた事、在宅透析をするので仕事時間に問題が生じないことがプラスに働いたようです)

現在は透析1年程度ながら、ほぼ毎日の透析とフルタイムの仕事をし、その合間をぬぐって美味しいモノ巡りなどで、全国津々浦々に出没してるようですよ。



この透析仲間もまったく透析で苦労してない訳ではなくて、シャント造設がうまくいかず、何度シャント造設術を受けても使える血管が作れず、現在はグラフト(人工血管)を入れています。

そういう不運にもめげることなく、すさまじい進撃ぶりなのです。

聞くところでは、腕に入れるグラフトの種類までも、自分で探してこのタイプをお願いしますと指示したそうです。

現在、この透析仲間の身の回りには、最新鋭の原疾患と透析の医療機器がズラリと並んでいて、僕もお会いした際に、
「それ、何の機械? 初めて見た!」となってしまいました。



実はこういった超前向きな透析患者さんは1人、2人という少数ではなく、近年(ここ1~2年)に透析導入した患者さんの中にはたくさんいるようです。

透析を受け始めて、ソーシャル上で出会った仲間から、障害者雇用のほうが就職が有利と知り、通常なら入れないような企業に就職できたとして喜んでいる患者さんも多くいます。

そして、食事制限のために心を痛めることもなく、積極的に長時間透析や在宅透析に取り組んで、貴重な食事も精一杯楽しめる状況を作っていますね。



いつの間にか、「透析を受けたら5年」や「透析は地獄」という概念はなくなってきていて、むしろ腎不全末期の尿毒症症状で苦しむより、透析を受けたほうが人生が輝けると考えている人までいるのです。

僕自身も現在のこの状況を知り、
「これは、自分もその方向に行かないと時代に取り残される」と思うようになりました。

フルタイムの仕事と在宅透析という組み合わせは、現在の最強ではないでしょうか?

そこにある、現在の素晴らしいシステムを有効活用し、自分の人生を輝かせることは決して難しいことではありません。

少し積極的に行動すればチャンスがそこかしこに転がってることに気付くはずです。

出来ない理由をひねり出して並べる時代は終わりました。

ちょっと頑張って飛び出してみれば、手に出来る可能性は無限大なのです。



世の中には残念ながら、「病気でも前向きに生きる」という素晴らしい患者さんに対し、否定的で阻止してくるような医療従事者さんもごく一部にいらっしゃるようですが、大半の医療従事者は「透析でも臆することなく積極的に歩もうとする患者さん」にとても好意的です。

そして、より元気に透析患者さんが仕事をできるようにと、より優れた長時間透析可能な透析液(長時間の透析では必要成分の喪失なども多いため配分が難しいらしい)の開発に臨んだり、在宅透析でもオーバーナイト透析が可能なシステムを生み出してくれたり(在宅透析では医療者が付き添っていないために万一の場合もあるため、透析中の睡眠が危険視されているケースがある)などの透析医の先生が出現してきています。

また、血液浄化の臨床工学技士さんや透析の看護師さんの間でも、透析患者さんの社会復帰に協力的で、自身の仕事時間に影響を与えることも顧みず、頑張ろうという方々がたくさん現れ始めました。

透析を余儀なくされる患者さんも、そして透析医療に従事する医療者さんも、時代に取り残される事無く輝く方向に進んで行かれる時代になってきたようです。



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